2018/04/11.Wed. 17:17

“才能に障害はない”として雇用に取り組む パソナハートフルに、幸せな働き方を学ぶ

株式会社パソナハートフルより
相澤登喜恵先生:アート村チーム アーティスト指導(写真 左から2番目)
千田貢美加さん:アート村チーム チーム長(写真 左から3番目)
岡田清香さん :パソナハートフル営業(写真 左から4番目)
パソナハートフルの現在の活動には、「受託業務」「アート村」「アート村工房」「ゆめファーム(農業)」「パン工房」「コンサルティングサービス」の6部門があります。
https://www.pasona-heartful.co.jp/
聞き手/柳川舞:KANSEI Projects Committee副理事長 エアアロマジャパン代表取締役

Vol.1

障害者をアーティストとして雇用する取り組み
KANSEIProjectsCommittee
柳川本日は、私どもKANSEI Projects Committee(以下、KPC)との対談に応じていただきまして、ありがとうございます。
KPCでは、感性を活かせる社会、感性を生かせる企業文化の醸成が必要だと考えています。
一人ひとりの能力、感性、個性を伸ばすことが生産性を上げることに繋がるのではないかと想定して調査、研究を行い、その成果を商業的に活用することで、社会に貢献しようと活動しています。

しかし、現実は、失敗を許さず、最短の時間で効率を求めている結果、そこにいる人々は、できるだけ何も感じないように、感性を閉じて生きています。

働き方改革が叫ばれているのも、人口が減っていくなかで生産性を上げることが目的の一つだと思いますが、出てきている施策は時間を削ることに終始しています。
皆さん、問題は感じていますが、解決策となると見当もつかないという状況にいます。

パソナハートフルの活動には、社会が抱える問題点を解決するヒントがたくさんあるように感じ、この機会を楽しみにしてきました。

それでははじめに、パソナハートフルの企業文化と活動についてお話いただけますか?

千田長くなりますので、ざっくりご説明しますと、パソナハートフルの母体であるパソナグループは「企業の問題点を解決する」を企業理念に42年前に創業し、育児を終えてもう一度働きたいと願う家庭のお母さんたちに、社会人時代の能力や技術を活かすことのできる適切な仕事の場をつくりたいという想いで人材派遣事業を始めました。
その枝葉として、前身を含めると1989年から障害者雇用の問題を解決することに取り組んでいるのがパソナハートフルです。

そもそもはオフィス事務の受託業務からスタートし、グループ企業から、請求書の発送や、名刺管理、各種資料などの印刷業務を請け負っていました。しかし、こうした事務作業は例えば文字が読めなければならないなど、重い障害のある障害者、特に知的障害者にとって、できる業務が限られるという問題に突き当たりました。

その解決策を探っている時に、当時、イギリスのチャールズ皇太子が設立した財団が、障害のある方々のアート制作により社会参加をバックアップしていることを知り、日本でもアートを通じた障害者の雇用創造ができるのではないか、とパソナハートフル社長の深澤が考えたのです。
そして1992年には、“才能に障害はない”をコンセプトに、働く意欲がありながら、就労が困難な障害を持った方々のアートによる自立を目指して、アート村をスタートしました。

初めは、作品をお預かりして展示会を開催し、売れると、ほぼ全額を本人にお返しするという活動でした。ただそれでは恒常的なサポートにはなりません。
そこで制度を検討し、アーティストとして雇用することにしたのです。

KANSEIProjectsCommittee

アーティストは、勤務時間に出社し、業務として絵画制作に取り組みます。
完成した作品は展示会で販売するほか、アート素材として活用し、クリアファイルや絵葉書、スマートフォンケースなどに商品化もしています。

また「アート村工房」では、手先が器用な障害のあるメンバーがアーティスト作品のカードの裁断や封入、シューキーパーや手提げ袋などの縫製やプリザーブドフラワーなどの製作を手作業で行っています。
こうした経験を通して、それぞれの障害特性(=才能)を活かせばさまざまな業務ができることがわかったため、ほかに、農作業の「ゆめファーム」や「パン工房」と部門を広げてきました。

会社にある既存の仕事に就いてもらうのではなく、それぞれの特性(=才能)を活かせる業務を社内に創ってきたのが、パソナハートフルの障害者雇用の特徴だと思っています。

さらに現在では、私共の経験を踏まえ、障害者雇用を積極的に取り組もうとされている企業様に、障害者雇用の相談や研修、人材紹介・セミナー開催などの「コンサルティングサービス」を提供しています。
また、企業向けのオリジナルグッズや記念品を開発・販売することで、障害者支援をCSR活動につなげていく提案もしています。

KANSEIProjectsCommittee

パン工房で作られたパンが並ぶ、大人気の売場。

柳川障害者の特性を活かした仕事を創る一方で、障害者の感性に着目してアーティストとして雇用するという考え方は新鮮でした。
「才能に障害はない」をキャッチフレーズにされています。
どんな障害を持った人にも才能はあると見ているのでしょうか?

相澤私は少し違います。知的障害で絵画の才能がある人々、現在、アーティストとして雇用している人々の多くが自閉症の人々です。
「才能に障害はない」というのは確かにその通りなのですが、自閉症に限って言えば「障害が才能を生む」と考えています。
色遣いもラインも彼らでなければ生み出せない、驚くべき才能を持っています。

柳川平昌オリンピックで金メダルに輝いたフィギュアスケート男子の羽生結弦選手が「怪我をしていなかったら金メダルは取れなかった」という発言をしていました。
才能があればこそですが、困難を乗り越えたからこそ磨かれるということもあるのではないかと感じました。
アーティストを指導している相澤先生はどう感じていらっしゃいますか?

相澤ここで働くアーティストたちの多くが、いじめられた経験をもっています。
皆と同じでない、同じようにできないということから、過去にいじめられ、否定された経験のある子もいます。

ここでは、お給料をいただいて絵を描いていますから、社会人として守るべきことはちゃんと理解してもらっています。来客には必ず挨拶をするとか、出社時や帰宅時の挨拶、仲間に敬意を払うなど、きっちり折り合いをつけています。

しかし、絵画については、私は彼らの表現方法を全面的に支持しています。

柳川こちらのアーティストのひまわりを描いた作品を拝見しました。
同じアーティストが学校に通っている頃に描いたという絵と比べて見せていただいたんですが、まるで違っていました。

かつての絵は画一的な、ひまわりとはこう描くものだというありがちな絵だったのが、個性的な作品に変化していました。

通常は、さまざまな技法を学ぶことによって上達すると考えられているように思うのですが、真逆に、才能を解き放つことによって個性的な作品が完成しているようです。

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アーティストである森田氏と、彼が絵の学校に通っていた頃の「ひまわり」の絵

森田氏が「こう描かなければいけない」という学校教育で教わった考え方を捨て、
自分の感性のままに描いた「ひまわり」の絵

相澤「障害者なのに、こんなに上手なんですね」とか「健常者が描いたみたいに上手」だと言われたら、私は失敗だと思っています。
健常者が描く絵を目指しているのではなく、彼ら独特の表現方法によって描かれる作品にこそ価値があると考えていますので。

もう一つ「自由に描いてください」とも決して言いません。
「自由に描く」という表現に、すでに一定の概念があるからです。
自由と言いながら、まるで自由でないという結果になります。

私はむしろ、不自由と制約を適度に与えることで伸びるような気がしています。
不自由と制約とは、絵画の課題であったり、画材を指定することだったり。
この子なら乗り越えられると確信がある時にすることですけれどね。

柳川アーティストを指導している立場で問題だと感じていることがありますか?

相澤この先、問題になってくると思っているのが、アーティストの加齢による消耗です。
アーティストたちは障害による特性で、驚くべき集中力で作品に向かいます。
その分、消耗も激しいのでしょう、45歳を過ぎるあたりから顕著に老化が見え始めます。

20代後半のアーティストは、脂も乗り切っていて、いいんですね。
しかし、加齢によって集中力がなくなり、持続できない、絵が描けないという状態に入っているメンバーも出てきています。私たちには想像のつかない疲れを抱えているように思います。

柳川そうなったアーティストにはどのような対処を?

相澤今のところ、ご家族のサポートを受けながら描いてもらうという方法をとっています。
お給料をいただくことの対価として作品を描いてもらっているので、どうすれば作品を仕上げられるのかを考えた結果です。
企業としては、今後の課題になってくると思います。

柳川定年退職の時期などの雇用条件も御社規定の通りなのですか?

千田働き方は、定年も有給休暇も、障害者と健常者はまったく同じです。
加齢に伴うアーティストのサポート方法については、今後、考えていく必要があると思っています。

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