2019/05/26.Sun. 21:21

禅のごとく自由な発想で問題解決を図る サスティナブル建築の牽引者 Vol.5

建築家

辻 純一 さん

1948年、秋田県秋田市育ち。県立秋田高校卒業後、1968年渡米。1969〜1972年、ワシントン大学建築学部(ミズリー州セントルイス)。1972〜1975年、コーネル大学建築学部(ニューヨーク州イサカ)修士課程卒業。1976〜1986年、SOMなど3つの設計事務所で研鑽。1992年からツジ マネジメント インク(ワシントン州シアトル)代表取締役、2000年〜、株式会社マキネスティコーヒー(東京都墨田区)代表取締役、2015年〜サステイナブル デザイン グループ(東京都墨田区)ディレクター、2017年〜株式会社アイジャスト(東京都墨田区)CEO
オフィス、ホテル、住居、医療施設、教育施設、リクリエーション施設など多数を設計、事業開発やマネジメントも行う。古典&民族建築理論を独自に研究、趣味は茶道藪内流。

http://tmiseattleusa.com/about-i-just-inc/

その5 編集後記に代えて
自由に発想し、感性豊かに生きる
辻純一のもう一つの世界観

KANSEIProjectsCommittee

品質に忠実に丁寧に、おいしいコーヒーを提供

辻さんは、「マキネスティコーヒー」(墨田区緑3-11-5)という最も選りすぐられ、そしてマイクロクライメッツの個性が豊かに表現されているスペシャリティコーヒーに特化したコーヒーショップを経営している。
LAMARZOCCOというコーヒーメーカーを扱う人が、東麻布にショールームを出店する際にパートナーとなったことがきっかけ。その当時、世界一と言われていたバリスタに、コーヒーの焙煎から抽出までを手取り足取り教えてもらい、グアテマラの品評会に産地見学に出向くなどして、スペシャリティコーヒーの魅力にはまったのだという。

ショールームは業界の話題となり、大手コーヒーチェーン店などがLAMARZOCCO導入。出資する企業があり、店舗を広げたが、リーマンショックの煽りで閉店に追い込まれた。現在は墨田区の「マキネスティコーヒー」1店舗で、焙煎からコーヒーの提供までを行なっている。

「マキネスティコーヒー」は、品質が高く選定の必要がないスペシャリテ・コーヒーだけを扱う。スペシャリテ・コーヒーが採れるのは、赤道直下から南北回帰線までに位置するグアテマラなど限られた地域。標高1500m前後のローム層の急斜面。コーヒーの木になる実のうちのわずか10%を一粒一粒、手摘みにしているという。コーヒーの実が摘めるのは1年のうち2か月だけ、小さなコーヒー農家が機械に頼らず、人の手で生育生産しているまさにスペシャルなコーヒーだ。

「品質を買うために、言い値で買う」共存共栄のビジネスとして成り立っている。

「エスプレッソを淹れるには、豆は7g、抽出する時間は何分と決めることで一定の品質にしている店がありますが、ここでは、淹れる人の五感に頼り、贅沢に豆を使ってわずかな量を淹れています」と、辻さん。

こうして提供されるエスプレッソは、わずかな量。これが素晴らしくおいしい。
コーヒーは「飲み終わった後も香りを数時間楽しめる」というのが、よくわかる質の高さだ。

KANSEIProjectsCommittee

辻さんは「コーヒー文化があるエキゾチックな国々では、豊かなカルチャーに出会えます。人間の原点を見るような歴史も面白く、現地に行くと、映画のワンシーンを見るような景色に出会えます」と言う。

大学で、禅問答に鍛えられ、何事も必死になって解こうとすれば、解けないことはない。答えは自身で考えるという姿勢を徹底的に身につけた辻さんが、尊敬しているアートフォームは茶道だという。

「茶道は4次元のアートです。ビジュアルの美、香り、味覚、触覚、聴覚と五感のすべてに、時間や季節の移ろいと、残るものと、すべてがその場にあるのですから。茶道にもシアトルの大学時代に出会いました。武士が戦の前の日に死を覚悟して点てる茶、すなわち別れの儀式として教えられたのです。お客様を迎えるために、1週間も前から庭を整え、前日には庭木の葉の一枚一枚を拭き清めて、灰手前、炭手前景色に美意識をこめる富貴の茶を体験できたことは貴重です」と。

そして、感性豊かな社会にしていくために、単純にできることはいっぱいある「必ずしも大きくなる必要はない、楽しんだらいい。忙しすぎるといい仕事はできないからね」と語ってくれた。

もっと話が聞きたいと思わせる深く広い知識と経験。何より自由な感性が心地よいほどに楽しく、インタビューは予定していた時間をあっという間に過ぎて続いた。
「もっと聞きたい!」と言うと、「場を設けてくれれば、いつでも!」と。茶目っ気もあり、とても気さく。もったいないから、次回は友人たちにも声をかけて話してもらおうという気持ちになった。

KANSEIProjectsCommittee