新時代を切り拓く自動車ディーラーの心地よく地域の人々とつながる場づくり Vol.1
笹山 泰治 さん
ネッツトヨタ富山株式会社 代表取締役社長
1968年、富山市生まれ。東京ベイエリアのホテルに勤務後、2006年、富山県内に8店舗を展開するネッツトヨタ富山に入社。2014年、代表取締役社長に就任、現在に至る。
- ネッツトヨタ富山株式会社
Vol.1(前編)
居心地のよい空間で快適に過ごしてもらうことから
自動車の販売店というよりもカフェのように居心地のよい空間ですね。
店を訪れるお客様は、車の購入を検討している方々もいますが、その多くは購入後の点検やオイル交換、タイヤ交換などが目的です。メンテナンス作業が終わるまでの30分~1時間前後を、店内でただ待つだけ。メンテナンス自体を楽しみに訪れる人はまずいません。その方々に、いかにくつろいでいただくか、快適に過ごしていただくかを考えてリニューアルしました。
建築条件やスペースに限りのある中でのリニューアルでしたので、結果的に店内に車を置いていないのですが、女性のお客様を中心に「いいね!」と言っていただいています。
店内の植栽や家具もステキです。
富山南店のリニューアルでは、「快適にくつろぐことのできる空間」という基本コンセプトを設計事務所のデザイナーに伝えて、いろいろ提案してもらいました。
北欧の家具や、植栽、他のお客様の視線が気にならないソファーコーナー。ベンチシートからは、ピットスペースに面したガラス越しに、愛車のメンテナンスの様子を眺められるようになっています。
営業を続けながら3カ月の工事でリニューアルを終えました。
なぜ快適空間を追求されたのですか?
自動車販売業界は、20年程前と今では、大きく市場環境が変わってきています。
富山県は世帯当たりの自動車保有数が全国2位と、車が無くては暮らしていけない地域ですが、若者の車離れや、この先進むであろうカーシェアリング等が、自動車ディーラー離れにつながる可能性は否定できないという危機感を持っています。
実際に、20年前は営業担当者による訪問販売が主流で、メンテナンスの際にも担当者がご自宅で車を預かり、メンテナンスが終了するとご自宅までお届けにあがるというスタイルがごく一般的でした。しかし、今では訪問販売は好まれません。情報だけならインターネットで得られますし、同じ商品であればより安くが求められる傾向にあるからです。
店舗も、かつては営業拠点であり、バックオフィスだったのが、今ではショールームとなり、来ていただいて実際の車をご覧いただき、試乗していただくことが重要な役割になりました。
いろいろな車を体感していただけるよう、ここでは常時10台以上の試乗車を用意しています。
これからの方向性を探る中で、よく言われていることですが、“カスタマー・エクスペリエンス”を考えるようになりました。顧客に体験を通して満足を得ていただく…と言っていいでしょうか。
車はTOYOTAが開発・製造し、商品としての満足度はTOYOTAが創り出しています。それに対して販売者であるディーラーは、購入する楽しみを提供し、長く気持ちよくお付き合いいただくことを目指そうと考えています。
ハイレゾ自然音源を活用した「KooNe」やアロマも導入されていますね。
“カスタマー・エクスペリエンス”のキーワードの一つに“五感”があります。
リニューアルの計画を始めたのが完成の1年ほど前。その頃に提案をいただき、リニューアル・コンセプト「快適にくつろぐことのできる空間」に適合するものとして、当初から組み込んでいました。
ただ、音も香りも既存の自動車ディーラーのイメージに合わせたものではなく、富山南店のコンセプトに沿う提案を求めました。ゆっくりくつろいでいただくために、BGMは四季に合わせて変えています。店舗の第一印象を決める玄関口の香りは1年を2期に分けて変え、奥のソファーコーナーは音と同様に四季で香りを変えています。
今は春なので、木の生い茂っている中に水の音があり、鳥のさえずりが聞こえるでしょう?
“五感”は居心地の重要な要素です。店内インテリアによる視覚、触覚、提案いただいた聴覚、嗅覚、そして味覚はこだわりの珈琲豆と、踏み込んでみました。