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下関の海を伝えるVRで体感型の海洋学習
下関の海を伝えるVRで体感型の海洋学習
地元の海の中で起こっていることを水中VRで伝えていく試みが始まっています。日本財団 海と日本プロジェクト 海のごちそう地域モデルin下関では、もっと身近に海を体感できるようにと、ウェルビーイング研究チームで水中VRの企画・撮影・制作を行いました。
このVRの撮影では、水族表現家としてグローバルに活躍する二木あい氏が、下関北浦地方の海に素潜りして水中の生物を紹介しています。地元のダイバーが水中用の360°カメラを持って一緒に潜り、泳ぎながら魚たちを紹介していく二木あい氏を撮影。およそ3分に収まったVR映像の構成・編集は、メディアアート担当の研究メンバーである三宅律子氏が担当しました。
360°動画の編集は単純なカットでつなぐだけでなく、立体的に見たときに違和感のないように編集していきます。美しい海の中を疑似体験できるだけでなく、見る人に対して二木あい氏が問いかけるような映像は、海の中の出来事を親切に案内されているような気持ちになります。北浦の海は日本海側なので寒流の冷たい水に住む生物が多く生息していますが、今回の撮影では、沖縄にいるような青いきれいな熱帯魚も発見。海水温度の上昇により、温かい水に住む生物が移動してきています。地元のダイバーさんによると、以前は夏の暑い時期だけ見られることがあった熱帯魚も、ここ何年は冬でも住み着いているそうです。
VRの映像にはたくさんのきれいな魚たちも写っていますが、環境問題の1つの大きな課題でもある海洋ゴミも映像内で紹介されています。ゴミの中でたくましく生きる魚を紹介していますが、ゴミ問題に焦点を当てる映像ではなく、美しい海と生物の命を感じられるような海中VRにすることで、美しい海を守りたいという自主的な意識変容を促そうとしています。
海感360°のYouTubeリンク:
五感を使ったVR教育
3分強のVRは二木あいのナレーションと映像だけでも十分楽しめますが、日頃海に潜る機械の少ない子供達のため、五感の体験をプラスしています。2023年3月に行われた下関ひがしこども園での海の教室では、タライに地元の浜から取ってきた砂と、海から汲んできた海水を入れて触覚と嗅覚(潮の匂い)も感じられる状態で臨場感を高めています。子供達は大はしゃぎで、まるで海の中で泳いでいるような気持ちになるようです。VRを見ながらタライの中で足をバタバタ動かす児童もいました。
下関東こども園インスタ映像:
https://www.instagram.com/p/Cpl5CRfPrey/?img_index=1
https://youtu.be/rEkeed_KB8g
海洋環境に関する教育は、日頃は見られない海の中の現状を知り、子供から大人まで海を大切に感じる思想変容が必要です。海の生物と友達になると、海洋ゴミを自主的に減らすようになるそうです。人間だって友達の家に遊びに行って、自分のゴミを散らかしたりしないでしょ、と二木あい氏は言います。
子供も大人も、海に潜って実際の魚を見る機会は多くありません。海洋教育やSDGsなどの環境教育の現場でも、安全性の問題もあり、海に潜って海中の変化を確認するのは困難です。地元の海で水中VRを撮影し、その地域の海洋教育の教材として使うと、実際に海に潜らなくても、海中の様子を簡単に疑似体験しながら知ることができます。そして、私たち人間も生物と同じ目線で同じ環境に存在している映像を見ることは、人間と人間以外の生物との調和や共生を感じる時間となります。